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求人情報毎日更新 2024/04/25 NEW!

 

「すてきな絵本たち」をはじめて読まれるあなたへ

 やっぱりおおかみ

 

 
 作・絵 : 佐々木マキ
 
 出版 : 福音館書店
 
 定価 : 本体800円+税
 
 対象年齢 : 3さいから
 

 

 

ひとりぼっちのおおかみは、仲間を求めて、ぶたの町、うさぎの町、とさまよいますが、どこへ行っても仲間はいません……。今までの絵本にはない、斬新なテーマに取りくんだ意欲作。

 

↑福音館公式サイトより抜粋

 

 

-――――――――― 以下、筆者の感想 ―――――――――――-

 

さて今回ご紹介しますは「やっぱりおおかみ」。

絵本でよくヒール役として扱われることが多い(気がする)オオカミが主役のお話です。

初版日は1977年4月。

福音館書店発刊の傑作絵本たちの中の一冊なのですが、

私はつい最近まで全く存じ上げませんでした。

 

さてこちらの絵本、さっくり内容を説明いたしますと。

こんな感じになります……。

 

――――――――――

 

あるところに一匹のオオカミが居ました。

 

オオカミはこの世で生き残った

たったいっぴきのこどもオオカミでした。

 

ひとりぼっちのオオカミは、じぶんのなかまをみつけるために

ウサギの町・ブタの町・シカの町など、あらゆる町をさまよいます。

 

ところが、どこの町に行っても、オオカミは

いっこうに自分の仲間を見つけることができません。

 

ときどき、町の住人に拒絶されることに「け」とうんざりしながら、

あらゆる町を放浪し、あらゆる住人に拒絶されたオオカミは、

やがて気づきます。

ああ、俺の仲間はこの世界には居ないんだ。と。

 

そうこうしているうちにオオカミは、とある建物の屋上で、

無人の気球を見つけました。

やがて無人の気球は空へ遠くに飛び立っていき、

オオカミはその様子をただぼーっとみつめていました。

「やっぱり俺はオオカミだもんな、

オオカミとして生きるしかないよ」

と、心の中で思いながら。

 

……こうして、ひとりぼっちのオオカミは、

ひとりぼっちのオオカミとして生きることを決意しました。

 

そう決意した途端、オオカミは

不思議と愉快な気持ちになりましたとさ。

 

――――――――――

 

……以上が、だいたいのあらすじでございます。

 

だいたい上記の通りの内容のストーリーが、

作者の佐々木マキ氏の描く、

灰色がかったやや暗めのちょいビターなビジュアルにて

つらつらと展開されていきます。

 

 

絵本のオオカミってなんでこんなヤな役多いんですかね?

 

 

私のあらすじだけ見ると、

この絵本はけっこう暗い絵本なのかな?と

思われる方もいるかもしれませんが、

暗めの世界のお話の合間合間に挟まれる、

おおかみの「け」(と吐き捨てる場面)を

はじめとしたユニークな演出と、

佐々木マキ氏の描く独特なタッチの

キャラクターデザインのおかげで、

全体的に何とも言いがたい

奇妙かつヘンテコな雰囲気を作り出しております。

 

その結果、子供でも楽しく読める読み聞かせ絵本として

きちんと成立しているのでご安心を。

 

 

雰囲気は暗いけど、どこかユーモラス

 

 

さて……そんな奇妙な「やっぱりおおかみ」ですが。

この絵本が「すてきな絵本」たらしめる理由。

それはずばりですね。

一般的な絵本にはまずないであろう

斬新なテーマとストーリーを持っているところです。

 

まず、あらすじで大体わかっていただけたかと思いますが、

この絵本のテーマは大雑把にいうと「孤独」です。

 

まずみなさんに伺いたいことがあるんですが、

孤独をテーマにした絵本ってなにがあるかパッと思いつきますか?

もちろんこの「やっぱりおおかみ」を除いて。

 

ストーリーがある絵本のテーマとしてよくあるのは、

友達や家族・好きな人等、

「誰かしらと関わることの楽しさ・喜び・素晴らしさ」

メインにしたものですね。

分かりやすいのですと、「スイミー」とか、ぐりとぐらシリーズとか、

あと前回紹介しました

「しろいうさぎとくろいうさぎ」とかもそうですね。

こういう系統の絵本は本当にたくさんとありますよね。

え?スイミーはそういう絵本ではない?

 

あと「うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん」など、

「大切な人との死別」といった

悲しいテーマを扱った子ども向け絵本も最近は増えてきていますね。

そういう悲しい絵本というのは、大人向けの絵本とかに

多いイメージが昔は強かったですけどね。

 

 

で、今の今までいろんな所からいろんな絵本が

たーーーっくさん出版されましたが、

「孤独」をテーマにした絵本は

なにがあるかと言われると……

 

……思いつきますか?つかないですよね?

思いついたとしてもおそらく数は相当少ないかと。

 

 

とまあ、扱っているテーマが絵本として斬新であり、

既にもうこの時点で他の絵本に無いキラリと光るものがある、

すてきな絵本ではあるのですが……

さらにさらに素敵な点があります。

 

それは……さきほども書きましたが、ストーリーです。

社会の輪から外れた、

いわゆる「マイノリティ」な存在であるおおかみの

生きざまを、静かに、しかしたくましく描けています。

 

それじゃさっそく、上のほうでつづらせていただいた

私のあらすじをもうちょっと深く掘り下げていきましょう!

 

 

まず、物語の冒頭~中盤。

オオカミが仲間を探して町を転々とする場面ですが、

どの町でもオオカミはひとりぼっちです。

 

例えば、ブタの町では、街の住人のブタさんと顔があっただけで、

ブタさんたちにそそくさと去られていきます。

 

ウサギの町に至っては、その場に居るだけで、

怯えられるわ指をさされるわで距離を取られるわで

猛烈に拒否られています。

 

俗にいう「仲間はずれ」

ここまで露骨に描いた子供向け絵本は

そうそうないでしょう。

少なくとも初めて見ました。私は。

 

 

そんな不遇すぎる扱いをされつつも

オオカミはただただ、

自分の仲間がこの世界のどこかに居ることを信じ、

仲間を求めて町をさまよい続けます。

 

「俺に似た子は居ないかな」とぼやきながら。

 

町の住人に拒絶されることに「け」とうんざりしながら。

 

ひたすら。

 

延々と。

 

自分の仲間が必ずどこかに居ると、信じて。

 

 

 

 

……ですが、いくら歩いても、

オオカミは自分の仲間を見つけることがやっぱりできません。

あらゆる町を放浪したオオカミは、やがて気づきます。

ああ、俺に似た子はこの世界には居ないんだ。と。

 

 

 

……やがてオオカミは、

とある建物の屋上で、無人の気球を見つけます。

物語の終盤で、おそらくこの絵本の一番の「魅せ場」ですね。

 

私はあの無人の気球は「現実逃避」のメタファーだと思っています。

あの気球は、オオカミが今居る場所とは

おそらく全く別の場所に飛んでいくのでしょう。

もしかしたら、飛び立つ気球の行きついた先の場所には、

仲間がいるかもしれません。

まぁ少なくとも、あの気球がどんな場所に行こうが、

とにかく乗りこめば自分のことを拒絶する住人たちしか居ない、

今のツライ現実から逃げ出せることは可能なハズです。

 

ところがおおかみは気球に乗らずにそのまま踏みとどまっていました。

「オオカミとして生きるしかないよ」とぼやきながら。

そして、気球は何処かへ飛び立っていきました。

 

 

オオカミが気球に乗らず踏みとどまったここのシーンは

「自身がマイノリティであることを受け入れたシーン」なのですが

これはやれやれまったくしょうがない、という

「諦めの意志」を表したシーンではなく、

俺はマイノリティな俺のままで生きる、

俺は孤独に勝ってみせるという

「たくましき決意」を表したシーンだと私は感じました。

 

 

だから、現実から逃げることのできる気球に載らなかったんです。

 

あらゆる街を放浪し、自分は輪から外れた存在だと理解できたから。

 

今の「マイノリティな自分」をちゃんと

受け入れることができたから。

 

そんな「マイノリティな自分」で

この世界を生き抜いていく覚悟と自信が持てたから。

 

 

孤独でも、まっすぐ前を向いて生きる

 

 

今の現代社会、己がマイノリティであるがゆえに、

コンプレックスや孤独を抱えながら生きている人は

クサるほど居ます。

ひょっとしたら、あなたの知り合いの中にも、

ひっそりと心の中で

「わたしは誰にも理解されない、社会の輪から外れた孤独な人間だ」

思いこんでいる人がいるかもしれません。

かもしれません、というか、1人は確実に居ます。本当に。

 

この主人公のオオカミ君みたいに、

自分のマイノリティを受け入れて、

尚且つたくましく生きている人間がいったい何人いるのでしょう?

 

この絵本の主人公のオオカミ君は、

この世の輪から外れた孤独な人間にとって、

生きる勇気を示してくれた、

たくましくて、最高に格好いいヒーローなのです。

 

そして「やっぱりおおかみ」という絵本のストーリーは、

社会の輪から外れた孤独な人間に、

生きる勇気を与えてくれるロックなお話しなのです。

 

 

 

……というわけで、結論!

 

この絵本は、大人から見ても暗く、

子ども向け絵本のタブーとされているであろう

仲間はずれ」「孤独」「マイノリティ」という

テーマに挑戦した「子供向け絵本」であり、

そしてなにより、

人間がたくましく生きていくうえで大事なことを教えてくれる、

「子供向け絵本」でもあるのです。

 

そんな、斬新で、ロックで、アツい、

「子供向け絵本」

今の今までありましたか?????

いや、たぶん無い!!!

 

 

孤独を抱いていることに悩んでいるあなたにぜひお勧めします。

生きる勇気がわくこと間違いなし。

 

以上、黄鳥あづきでした、バイバイッ!!

 

 

ひとりぼっち

 

 

…………。

……。

 

しかしまぁ。なんでしょう。

マイノリティを自覚しておられる社会人の方々はもう重々承知かと思いますが、

現実問題、社会人がマイノリティとして生きることを本気で決意してしまうと、

社会人として生きていくうえではどうしてもどこかで弊害が出ちゃうんですよね。

 

だから、この絵本を読んだからと言って「俺はマイノリティだから己を貫いて生きてくぜ!」と

決意してガンコな人生歩んでしまうのはやめたほうがいいっす。

多少無理してでも、できるかぎり、周りとなじみながら生きていった方が

何だかんだで生きやすいとは思います。

 

悲しいけど、これが現実なんです。

現実ってホント輪から外れた人間に対して非情ですよね。あーやだやだ。

 

 

 

 

 

著:黄鳥あづき

 

 

 

 

 

 

 

 

≪すてきな絵本たち 2015年10月20日号≫
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