日頃、子どもの姿を職員同士でどのように共有していますか。
記録や報告のためだけでなく「保育の考えを重ねる時間」として話し合ったことで、園全体が良い方向に変わったという報告もありました。
忙しい時期であっても立ち止まり、子どもの姿を共有する時間を持ちたいですね。
ここでは、管理職の方のお話をもとに「子どもの姿を園でどう共有するか」について紹介します。
「報告」ではなく「語り合い」に
職員会議などで「子どものエピソードを報告する時間」はすでに設けている園も多いでしょう。ただ、それが“出来事を伝える”だけで終わってしまうと、受け手には一過性の情報でしか残りません。
たとえば「Aくんが自分から片づけを始めた」という事実を報告するだけでなく、「そのとき保育者はどう感じたか」「ほかの子どもにどんな影響があったか」などを語り合うと、一つの姿から多様な学びが生まれます。
園長や主任が意識して「先生はAくんの姿をどう感じたの?」などと問いかけることで、報告が“共有”に変わり、職員同士が保育観をすり合わせるきっかけになります。
子どもの姿がチームの軸になる
行事前や繁忙期は、どうしても「準備」「段取り」に意識が集中しがちです。しかし、園の中心にあるのは常に子どもたちの生活や遊びです。
共有の時間で子どもの姿を取り上げることは、「私たちは子どもを真ん中にした保育をしている」という確認作業にもなります。
たとえば、発表会の練習に取り組む中で「子どもが楽しそうに歌っていた」「緊張して声が小さくなっていた」といった具体的な姿を共有することで、職員同士の目線が揃い、取り組み方の修正にもつながります。
結果として、チームが一体となって子どもの成長を支えられるのです。
職員の安心感をつくる“共有”
共有の場は、職員が「自分の見方を受け止めてもらえる」と感じる時間でもあります。
若手や経験の浅い職員が「子どもの姿をどう捉えたらいいのか分からない」と迷うときも、先輩の視点を聞くことで安心感が生まれます。
園長が「一人ひとりの見方に意味がある」と伝えることで、上下関係にとらわれない対話が広がりやすくなります。また、子どもの姿を通じて話し合う時間は、保育者自身が「自分の仕事が認められている」と感じる機会にもなります。こうした積み重ねが、職員の定着やモチベーションの維持にもつながります。
共有の積み重ねが子どもの育ちを支える
子どもの姿を共有することは、単なる情報伝達ではなく、園全体をつなぐ大切な営みです。
この小さな積み重ねが、結果的に子どもたちの豊かな育ちを支えることになります。近年、管理職者が中心となり、その場を意図的に設けている園も増えているようです。
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佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |