一般的な劇とは、観客に見せるために舞台の上で演じるものです。
しかし、保育の中の「劇遊び」とは、子どもたちにとって主体的な遊びであることが前提です。子どもが自ら考え、仲間と話し合い、創り、表現をする。園によって劇遊びの捉え方は様々ですが、子どもたちが思い切り楽しみ、成長できる遊びである点は共通しています。
ここでは、劇遊びのねらいや、子どもたちの成長について考えていきたいと思います。
劇遊びのねらいと子どもたちの姿
劇あそびのねらいとは一体どのようなものでしょうか。
「自信を持って表現できるようにする」「仲間と力を合わせる楽しさを知る」「物語の世界を楽しむ」「道具づくりなどを通して創造性を養う」
そういったねらいが考えられます。
子どもたちは劇遊びをよりよいものにするために仲間同士で意見を交わします。仲間とイメージを共有しながら1つのお話を考えたり、練習中のよかったこと・悪かったことをフィードバックし合います。そういった経験の中で、みんなと同じ目標に向かって進んでいく面白さや達成感を味わい、自信が芽生えることが期待できます。
ときには、友達と意見がぶつかってしまったり、自分の悪かったところや苦手なことに向き合い葛藤することもあるでしょう。子どもたちの中には人前に出ると緊張してしまう子もいます。声が小さな子だっています。セリフを間違えて友達から指摘され、泣いてしまう……そんな姿も見られるかもしれません。しかし、そのような苦い経験も子どもたちの成長の糧となるはず。
劇遊びを通して、表現力や協調性が身につき、さらには友達との関係が深まるきっかけにもなるのです。
保育者も試行錯誤。劇遊びを成功させるには?
劇遊びの世界は奥が深く、ベテランの保育者でも悩むことはたくさんあるようです。
「セリフを暗記させるだけの劇になってしまった」
「保育者がアイデアを出しすぎて、子どもが考える機会を奪ってしまったかもしれない」
「人前に出るのが苦手な子も楽しめる劇遊びになっただろうか?」
など、劇遊びを実践した保育者たちからはさまざまな反省の声が。
劇遊びを成功させるコツを知りたいと思う方はきっとたくさんいると思いますが、「これをやったから成功する」という秘訣は存在しないのだと思います。
月並みではありますが、目の前の子どもたちの姿や声をよく観察し、興味に応じてアプローチをしていくことが大切です。
また、子どもたちが劇をつくっていく過程をドキュメンテーションとして写真や文章に残す手法もあります。練習風景を客観視することで得られる気づきもあります。保護者に共有することで、家庭での話題にも繋がるはずです。
子どもたちと一緒に試行錯誤しながら作り上げた一つの劇は、きっと保育者にとっても宝物になるのではないでしょうか。
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佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |