活動の進行や時間管理に意識が向くと、子どもの声が背景に埋もれてしまうことがあります。
たとえば、行事の練習中に「もう一回やりたい」と言う子がいれば、それは「もっと上手にやりたい」という意欲の表れかもしれません。一方で、「疲れた」という声には、「休みたい」という正直な気持ちが込められている可能性があります。
どちらも、子どもが自分の心を言葉にしている大切な瞬間です。
その言葉に耳を傾け、受け止めようとする姿勢が、安心感と信頼関係を育てていきます。
子どもの声から広がる保育を
子どもの声を聞くことは、単に意見を尊重することではありません。
「こうしたい」「これが好き」という声の中には、興味や関心、発達のサインが隠れています。
たとえば、「葉っぱ集めをしたい」と言う子の声から、自然物を使った製作活動に広げていくと、子ども主体の学びがぐっと豊かになります。
そのためには、日々のエピソードを職員同士で共有することも大切です。
「〇〇ちゃんがこんなこと言ってたよ」と話すことで、ほかの先生の気づきや関わり方が変わり、保育の流れそのものが柔軟になっていきます。
子どもの声を聞き逃さないように
子どもの声は、いつも大きく聞こえるわけではありません。むしろ、静かなとき、目線の合わないときにこそ、大切なサインが隠れていることがあります。
表情やしぐさ、行動の変化も“声”のひとつ。言葉にならない気持ちを感じ取るには、保育者自身の心に余白が必要です。忙しい日々の中でも、あえて立ち止まる時間を持つこと。それが、子ども一人ひとりに丁寧に向き合うための第一歩ではないでしょうか。
その声をつなげていこう

子どもから受け取った言葉や気づきを、家庭やチームにつなげていくことも大切です。
家庭と園が同じ“子どもの声”を聴くことができれば、子どもの世界はより広く、安心できるものになります。また、園内での小さな発見を記録に残すことも、次の保育への大切な手がかりになります。
子どもの声は、日々の中に散りばめられた宝石のようなもの。
その一つひとつを拾い上げ、丁寧に磨いていくことが、保育の質を育てることにつながります。
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佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |
