絵本の読み聞かせは、子どもたちにとって特別な時間です。物語の世界に入り込む楽しさや、保育者の声に耳を傾ける安心感。絵本は、言葉や表現を豊かにするだけでなく、心を落ち着かせたり、集団生活における一体感を育んだりもします。日々の保育の中で大切にしたい「絵本の時間」について考えてみましょう。
絵本を通して子どもの姿に変化が
読み聞かせの時間は、子どもたちにとって安心を感じられるひとときです。
保育者の声は、ただ物語を伝えるだけでなく、子どもの心のよりどころとなる場合があります。大好きな先生に同じ声で読んでもらえることで「ここにいて大丈夫」という気持ちが生まれるものです。
絵本の時間は子どもたちが心を整えるきっかけにもなります。最初は興味がなかった子も、友だちが夢中で聞いている様子に引き寄せられたり、ページをめくるタイミングに注目したりと、子どもの姿の小さな変化を見逃さないようにしたいですね。
言葉と想像の世界を広げる
絵本を通して子どもたちはたくさんの言葉に出会います。日常ではなかなか使わない表現や、リズムのある言葉に触れることは、語彙を豊かにする機会です。
また、絵本は想像力を深めるきっかけにもなります。動物や自然、空想の世界を描いた作品は、子どもにとって「もしも」「どうして」を考えるきっかけとなり、思考の芽を育てます。
読み聞かせの後に「どうしてカエルは飛んだのかな?」「もし自分だったらどうする?」と問いかけてみると、子どもたちの自由な発想が次々と飛び出してくるでしょう。
絵本を介して育まれるつながり
絵本は子ども同士、また子どもと大人をつなぐ存在にもなります。
「この絵が好き!」「ぼくも読んだことあるよ」といったやりとりから友だちとの会話が広がり、自然に関わり合う姿が生まれます。また、家庭で読んでもらった絵本を園で紹介することで、保護者とのコミュニケーションが深まることもあります。
読み聞かせをする時間や場所は、特別に用意された舞台でなくても構いません。園庭の木陰や、遊びの後の片付けが終わったあとのひとときなど、日常の中の小さな場面で取り入れることで、絵本は子どもたちの生活に自然に溶け込んでいきます。
読み聞かせは単なる活動のひとつではなく、子どもの成長を支える大切な「心の時間」として、日々の保育に大切に取り入れていきたいものです。
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佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |