めぐみ先生の保育コラム

大好きなぬいぐるみが手放せない子。「移行対象」のおはなし

 

登園する時に、お気に入りのぬいぐるみを持ってくる子はいませんか?もしくは大好きな毛布かもしれません。「保育園に来たら、ロッカーにしまっておこうね」と伝えても、なかなか手放したがらない子もいると思います。

子どもたちにとって手放せないぬいぐるみや毛布は「移行対象」と呼ばれています。

今回は、移行対象のおはなしです。

移行対象ってなに?

イギリスの小児科であり精神分析家ウィニコットは、子どもたちが肌身離さず持ち歩いているぬいぐるみや毛布を「移行対象」と呼びました。

子どもはぬいぐるみや毛布のことを生命を持ったものとして捉え、母子分離の課題が出てくる頃に移行対象として現れます。これは、分離不安への防衛手段なのです。つまり、お母さんと離れることへの不安な思いから、ぬいぐるみや毛布を持つことで自分を守っているのです。

調査によると、アメリカではおよそ5割の子が移行対象を持つとされていますが、日本では3割程度。文化的な違いが背景にあるのかもしれませんね。

 

ぬいぐるみや毛布はお母さんの象徴

子どもにとって移行対象の形はかわります。ガーゼや毛皮、お母さんのエプロンなどさまざまです。共通しているのは、柔らかくて肌触りがよく、頬ずりをすると気持ちが良いということ。

子どもは移行対象を抱きしめたり顔を埋めたりすることで、お母さんに抱っこされているような気持ちになるようです。安心感を与える、お母さんの象徴ともいえます。

 

母親との関係が安定すると移行対象を卒業する

子どもが4歳くらいになると、移行対象を卒業する時がやってきます。おもちゃ箱に入れたままいつのまにか忘れ去られてしまったり、「ばいばい」と言って自分でゴミ箱に捨てたというエピソードも。お別れの仕方もさまざまなんですね。

 

子どもたちは母親との関係が安定しているほど、移行対象がなくても安心して過ごすことができるようになります。母親のイメージを心の中に持ち、いつでも思い出すことができるからです。

 

保育園ではどう対応したらいいの?

保育園にお気に入りのぬいぐるみや毛布を持ってくる子がいたら、叱ったり無理やり奪ったりせず、落ち着くまで様子を見守りましょう。また、その子が興味のある遊びを提案するなどして、保育園にいる時は移行対象のことをいったん忘れ、楽しい気持ちになれるよう保育を工夫していきたいですね。

母子分離への不安を感じるのは自然なことです。成長の過程として捉えましょう。

 

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佐藤愛美(さとうめぐみ)

保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。

保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。

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