めぐみ先生の保育コラム 保育士の為のお役立ち情報

『頑張って食べよう』は言わない。食べることが苦手な子への向き合い方

あなたのクラスには、給食が苦手な子はいませんか?

ほんの少しだけ食べて「もうお腹いっぱい」という子や、野菜は絶対に口に入れようとしない子、「変な味」と言って口に入れたものをよく吐き出す子……etc

 

保育園は集団生活の場であるため、「時間までに全部食べなくてはいけない」というプレッシャーを感じ、給食が苦手になってしまう子は少なくないようです。また、親御さんが少食を心配するあまり、家庭で「なんでこれしか食べないの!」と叱られ続け、食事に恐怖を感じている子もいます。

 

こういった子どもたちが、食べることに対してポジティブなイメージを持てるようになるには、保育士がどのように関わっていけば良いのでしょうか?

 

“量”と“時間”はその子に合っている?

山盛りの料理を制限時間以内に食べなさいと言われたら、大人でも気が滅入ってしまうと思います。子どもたちもそれと同じで、自分が食べられる以上の量を目の前に出され、「長い針が12になったらご馳走様をするよ」と言われたら、食事をすることがノルマのように感じてしまいます。

よく私たちは「頑張って食べてね」という言葉を掛けてしまいますが、本来、食事は頑張るものではありません。一人ひとり食べられる量は違うので、食べ始める前に量を調整することをおすすめします。「今、自分はどれくらい食べられるかな?どれくらいお腹が減ってるかな?」と自分で考え、適切な量を選ぶことは生きていく上で大切な力です。もちろん、体調や機嫌、その日の朝ごはんの量や時間によって、食べられる量は変わってきます。

“お茶碗一杯は食べる”ことよりも、その子の“ちょうど良い量”を大切にした援助を行いたいものです。

 

感覚が過敏な子は、匂いや味をキツく感じることも

一度聞いた歌をすぐに覚えて歌い始めたり、絵を描くと豊かな色彩力を発揮するような子は、人よりも感じる力が鋭いため、味覚も敏感である場合があります。例えば、甘口のカレーであっても「辛い!」と吐き出してしまったり、ハーブや香辛料、炭酸水を「臭い」「痛い」と言って避けたりします。

このような感じ方を否定せず、決して無理強いしないようにしましょう。成長に伴い味覚の過敏さも変化する場合があるので、ゆっくりと見守っていきましょう。

 

食べることと、素敵な体験を繋げる

私が子どもたちの食事に携わる中で、最も気をつけていたことは「無理やり食べさせないこと」です。もう少しで午睡の時間になってしまう、○○ちゃんが食べ終わらないと困る!こういった焦りは、おそらく保育士であれば誰もが経験すると思います。

 

つい、「あと一口だから頑張って!お口に入れてモグモグごっくんして」と言いたくなってしまうこともあると思います。(私はありました)

しかし、大人に無理やり食べさせられた乳幼児期の経験は、保育園を卒園した後も、その子が30歳になってからも、辛い経験として記憶に残ることを忘れてはいけません。保育士のちょっとした焦りが、その子の「一生食べたくないもの」を作ってしまう可能性があるのです。

現在は食料も豊富に手に入るため、1つの食材を食べることができなくても、他の食材で栄養分を補うことができます。なにがなんでも好き嫌いをなくそうとする大人の関わりが、食事そのものを苦手にさせてしまいかねません。「いつかは食べられるようになる」くらいの気持ちで、ゆったりと向き合っていきましょう。

 

食事をする時に大切なことは、味や匂いだけではありません。誰と・どこで・どんな風に食べたかはとても重要なことです。保育園で毎日水やりをしていたトマトが実った時、それをおやつの時間にみんなで1つずつ食べた時、トマトはその子にとって美味しくて素敵な食べ物になるでしょう。保育士の仕事は、そんな“素敵な食べ物”をたくさん増やすお手伝いをすることだと思っています。

 

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佐藤愛美(さとうめぐみ)

保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。

保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。

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