めぐみ先生の保育コラム

子どもたちの感覚を考える

子どもたちは同じ発達段階であっても、感じ方は一人ひとり違います。一つの音や視覚物、匂い、触感に対して「心地良い」と感じる子もいれば「不快だ」と感じる子もいて、さらに「分からない」という子もいるのです。そのほかにも、色々な感じ方があるかもしれません。そういった「感覚」は目に見えないため、私たちは見落としてしまいがちです。今回は子どもたちの感覚についてお話します。

 

過敏な子、感じにくい子。感覚は一人ひとり違う

3歳児クラスで粘土あそびをした時、「気持ち悪いから触りたくない」と言って頑なに粘土に触れようとしない子がいました。その子は粘土以外も、プールの水の感覚が苦手だったり、「バナナがドロドロで嫌だ」と吐き出してしまったりする姿が日頃から見られたのです。このように、他の多くの子は気にならなくても、敏感に感じる子がいます。

 

子どもたちは見たり触れたり嗅いだり目に入れたりして、物事を認知し、成長していきます。一口に「成長」と言っても、形を覚えたり、物体への興味を広げたり、想像力を養ったり、言語化できるようになったり、他者とのコミュニケーションの仕方を覚えたり……ここでは語りきれないほどです。

 

感覚が過敏で「見たくない」「触りたくない」となってしまうと、そういった成長の機会を逃してしまうおそれがあります。その子が興味を持っているものや不快感を感じない物・方法を保育の中に取り入れ、成長の機会を作っていくことが大切だと思います。

 

また、過敏なだけでなく、感じにくいという子もいます。注意すべきことは、保育士の判断だけで「感覚がアンバランスなのね」と決めつけないこと。上司や他の専門家とも連携を図り、何が原因なのかを慎重に見ていくことが重要です。

 

保育士にできることはなんだろう

すべての子どもが同じ感覚を持っているという前提で保育を行うのは危険です。そこで私たちができることは、一人ひとりの感じ方をよく観察することではないでしょうか。

「粘土に触るのが嫌」と言った子がいれば、その活動中以外の場面も含めてその子をよく観察してみましょう。朝の会、散歩、給食、読み聞かせ、午睡、朝夕の送迎、家族関係、休日の過ごし方など、その子の普段の姿と取り巻く要素を一つずつ紐解いていくと、何が苦手で苦手ではないのか、何が好きなのか、などが見えてきます。

観察した内容は記録にまとめ、職員間や専門家同士で共有し、多くの大人の目でその子のことを考えていきましょう。

 

たとえ感覚に不安定さがあっても、その子が楽しく毎日を過ごし、のびのびと成長していけることが一番大切だと思います。保育士としてできることを、日々模索していきたいですね。

 

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佐藤愛美(さとうめぐみ)

保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。

保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。

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