保護者からの要望の中には、現場として対応が難しい“無理難題”に感じられるものもあります。
子どものためを思う気持ちはわかるけれど、園のルールや他の子どもたちとのバランスを考えると、すべてを受け入れることはできません。
そんなとき、どんなふうに返答すればいいのでしょうか。
断り方に悩んだときに知っておきたい考え方と、実際の伝え方について考えてみましょう。
個人で対応しようとしない
「困ったな」と感じる要望に答えようとすると、焦りや不安から強い言い方になってしまったり、後から「やっぱり無理だったかも…」と後悔することがあります。
そんなときは「一度、園長に確認してからお返事しますね」と伝えて、いったん持ち帰るのが安心です。そうすることで、同僚や主任、園長とも考えをすり合わせながら、よりよい伝え方を探ることができます。
保育はチームで行うもの。ひとりで抱え込まないことが、保育者自身を守ることにもつながります。
気持ちに寄り添いつつ、理由を丁寧に伝える
保護者の要望に対して「できません」と返すだけでは、「冷たい」「わかってくれない」と感じさせてしまうことがあります。
保護者との信頼関係を構築するためには、園の方針や保育所保育指針の内容に則り、「この年齢の子どもにとっては、こうした生活リズムが大切であること」「全体の中でこう対応していること」など丁寧に伝えていくことが大切です。そのうえで、相手の思いを否定せず、誠実に向き合うことが信頼につながります。
園としての考え方を共有・明文化する
同じような要望に対して、職員によって返し方が違うと、保護者に不信感を与えてしまうことがあります。だからこそ、対応方針をチームで共有し、園としての考え方を統一しておくことが大切です。
最近では、よくある質問とその回答をまとめた「園のQ&A」をつくる園も増えています。文書にしておけば、新人職員にも伝えやすく、いざというときの心強い指針にもなります。
園の軸を育てよう
保護者とのやりとりに迷ったときは、まず「ひとりで抱え込まない」ことが何より大切です。
園としての軸を持ちながらも、相手の思いに耳を傾け、対話を重ねていくことが信頼につながります。
チームで考え、丁寧に伝えていくことが、安心して関わるための第一歩です。
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佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |