前回は、乳児の保育室の環境構成についてお伝えしました。
後半となる今回は、幼児クラスの環境構成のポイントについてご紹介します。
友達との関わりが増え、遊びの幅がグンと広がっていく幼児期。子どもたちが主体的に活動できるような環境構成において、大切なポイントを考えてみましょう。
「静」と「動」の二つの場
友達と一緒に大きな声で歌ったり踊ったりできる「動」の環境と、一人で落ち着いて過ごすことができる「静」の環境。保育室にはこの二つの場が必要であると言われています。園庭(屋外)と園内(屋内)であれば、この二つの環境は簡単に作ることができますが、保育室内で静と動の場を取り入れるのは、工夫が必要です。
たとえば、本棚や間仕切りなどを使い、絵本を読むスペースを作ったり、畳のマットを一角に設け、子どもたちがいつでも寝転がることができる環境を「静」の場として用意することができます。
また、体操やゲームなど「動」の活動を行う時には、保育室を広々と使うことができるようにセッティングすると思います。その際、室内の一角に椅子を置き、子どもたちの休憩スポットを用意するのはどうでしょうか。
思い切り遊ぶ場面、静かに落ち着いて過ごす場面、二つの場面の切り替えを、子どもたち自ら学ぶことができます。
興味・関心を刺激する楽しい仕掛け
子どもたちは興味を持ったものに対して能動的に関わり、友達や保育者との関係を育んだり、新しい遊びのアイデアを広げていきます。1年中、保育室が同じ環境であれば、面白みに欠けます。
季節に合った部屋飾りを用意したり、子どもたちの興味に応じた仕掛け作りをしていくことが求められます。乳児クラスの環境づくりと同じように、子どもの目線や手の届く場所に、「おもしろい!」「これなんだろう?」と思うものを配置しましょう。
また、保育者の思いが一方的に反映されている保育室ではなく、子どもたちの思いが中心にある保育室が理想的です。
子どもたちが作ったもの、散歩で見つけてきた木の実、楽しい思い出の写真などを環境づくりの材料にするなど、臨機応変に子どもたちの希望を環境づくりの際に取り入れていくのはどうでしょう?
子どもの「見られない権利」を守る
保育環境を考える上で忘れてしまいがちなのは、子どもたちの「見られない権利」です。
着替えている時、排泄の時、機嫌が悪い時などは、大人であれば「見られたくない」と思うはずです。しかし、保育園は子どもの集団生活の場であるため、そういった「見られたくない気持ち」が無視されてしまうことが多いのです。
保育者の人数、活動内容によっては難しいこともあります。しかし、着替えをする時にはできるだけ目隠しのある場所を用意したり、機嫌が悪い時は、保育者と二人きりで向きあるコーナーへ導くなど、身近なところから、子どもたちの「見られたくない気持ち」を守ることができるはずです。
子どもたちが安定した気持ちで過ごすためには、保育室が「居場所」であることが大切です。保護者から離れて過ごす子どもたちが、安心できる環境づくりを心掛けたいものです。
子どもたちの中には、保育室で飼育しているカブトムシや、大好きな絵本が心のよりどころになる子もいます。一人ひとりの安心材料や興味の芽を見極め、「明日もまた保育園に行きたいな」と思ってもらえるような保育室づくりを目指しましょう。
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佐藤愛美(さとうめぐみ) 保育士として保育園、子育て支援センターでの勤務経験を経てフリーライターに。現在、子育て関係の記事を中心に執筆している。パパ、ママ、保育士さんに向けて必要な情報を発信していけるように頑張ります! |
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