めぐみ先生の保育コラム

児童虐待の予防と早期発見のためにできること

「先生、虐待と躾の境目ってどこなんでしょうか?」と保護者の方から質問されたことがあります。児童虐待は決して許される行為ではありませんが、どの家庭においても起こり得る問題です。私たち保育者の役割は、未然に児童虐待を防ぐと同時に、早期発見に努めることです。

 

4つの児童虐待

児童虐待といわれる行為には、殴る・蹴るといった身体を傷つける「身体的虐待」、言葉によって心を傷つける「心理的虐待」、児童に性的な行為を行ったり見せたりする「性的虐待」、必要なケアを怠り心身にダメージを与える「ネグレクト」の4つの種類があります。

 

児童虐待は目に見える行為とは限りません。また、大人から暴力を受けた子どもたちは、真実を他者に言うことができず自分の心の内だけに隠しておくことも珍しくありません。「保育園では普通に笑っていたのに、まさか」ということもあるのです。

 

児童虐待が起こる原因

児童虐待が起こる背景には、複数の要因が潜んでいる可能性があります。家庭の経済状況や保護者同士の不仲、保護者または子どもの健康状態、子どもの発達の遅れによる不安、就労状況、職場や親族間の人間関係によるストレスなど、虐待の引き金となる原因は多岐に渡ります。

 

また、「虐待を受けて育った人は自分の子どもにも虐待をしてしまう」(虐待の世代間連鎖)という説も存在しますが、近年の調査によると必ずしも関連性があるわけではないということが明らかになっています。「自分は虐待を受けて育ったから子どもに手を上げてしまうかもしれない」と不安になっている保護者がいた場合、必ずそうなるわけではないこと、未然に防ぐことができるということを丁寧に伝えていくのが良いと思います。

 

早期発見と未然防止

子どもに暴力を振るってしまったり暴言を吐いてしまった保護者は、後ろめたさを感じて事実を隠そうとしたり、誰にも言えずに悩んでいる可能性もあります。保育園の送迎時や連絡帳を介し、子どもの様子だけでなく保護者の情緒の変化にも目を向け、気になることがあった場合は見落とさないようにしたいですね。また、虐待のサインに気づいた場合は担任保育士だけで解決しようとせず、主任や園長にも情報共有を行い、園全体で支援対策を考えていきましょう。

 

保護者の中には、子どもの育てにくい特性に悩んだ結果、虐待をしてしまう人もいます。「同じクラスのお友達はちゃんと座ってお話を聞けるのに、うちの子だけ走り回って言うことを聞かないんです。だから躾のつもりでつい叩いてしまいます」といったように、傷つけるつもりではないのについ暴力を振るってしまうケースも少なくありません。

保護者が孤独や自己嫌悪を感じる前に、保育者が寄り添い「共にお子さんの育ちを見守っていく味方である」ということを繰り返し伝えていくことが大切ではないでしょうか。

 

佐藤愛美(さとうめぐみ)

保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。

保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。

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