めぐみ先生の保育コラム

保育で方言を使うのはアリ? 先生たちの意見を紹介

方言とは、ある地域特有の言葉のこと。言語が地域ごとに発達し、音韻や文法等に特色が現れているものをいいます。一方で、全国共通の言語として公的な場所で用いられている言葉を標準語といいます。

 

方言と標準語。保育ではどちらを使うべき? もしくは使わないほうがいいの? と悩んでいる保育者は多いようです。今回は現場で活躍中の保育者の皆さんに、方言についての考えを聞いてみました。

 

保育で方言を使うのは「アリ」派の意見

「九州地方でずっと保育をしています。方言には同じ地域の人同士でスムーズに意思疎通ができたり、親しみが持ちやすいというメリットがあります。地域社会の中でも普通に方言が使われているので、保育園の中で意図的に方言を制限するようなことはしていません。紙芝居や絵本を読むときは標準語を使うので、場に応じた使い分けでよいのではないかと思います」(熊本県・主任保育士・Dさん)

 

「大阪出身で、今は東京の園に勤めています。最初は意識して標準語を使っていましたが、どうしても大阪特有の訛りや方言は出てしまいますね。園長先生は『色々な言葉を使う人がいることを子どもたちも知ることができるね』と言ってくださり、気が楽になりました。大阪の方言で手遊びをすると、子どもたちも興味を持って楽しんでくれたり『これはどういう意味?』と聞いてくれます」(東京都・保育士・Kさん)

 

保育で方言を使うときは「気をつけたほうがいい」派の意見

「私が働く園では色々な地方出身の先生たちが活躍しています。言葉の多様性を尊重することはとても大切なことだと思いますが、言語の違いによるトラブルは0ではありません。たとえば標準語の『泣いてしまった』を『泣けてしまった』と言う方言があります。この場合、標準語圏だと主語が誰なのか分かりにくいです。また、『〜します』を『〜してあげます』と言う方言もあります。その方言を使っている人以外には上から目線に感じてしまいますよね。方言によって誤解を与えてしまうこともあるので、仕事の場ではできるだけ標準語を心掛けましょうねと伝えています」(埼玉県・園長・Eさん)

 

「保育をする上で、丁寧な言葉を使うように意識しています。言葉は5領域の1つでもあり、子どもの育ちにおいて大切な要素です。子どもたちが、さまざまな地域の言葉があることを知ることは、文化を学ぶことにも繋がります。ただ、方言の中には、くだけた言い方や少々乱暴な表現も含まれます。保育の中で使うのに相応しいのかを意識し、言葉を選ぶ必要はあると思います」(静岡県・保育士・Hさん)

 

言葉の多様性にどう向き合う? 職員間で話し合ってみよう

保育の場で方言を使うことに関しては、様々な意見があり正解が難しいテーマです。方言特有のあたたかみや面白さがある一方、言葉の意味が正確に伝わらなくなる可能性があるという課題も無視できません。一般企業では、ビジネスシーンでは方言は避けて標準語を使うようにしようと決められている場合もあります。場面ごとに言葉を使い分けをすることで、円滑なコミュニケーションが可能になることもあるでしょう。

 

言葉の多様性に対して保育者がどのように向き合い、子どもたちにはどう伝えていくのがよいか園の職員間で話し合い、方向性を定めてもよいのかもしれませんね。

 

佐藤愛美(さとうめぐみ)

保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。

保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。

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