冬になると、園庭や散歩道で虫の姿を見かけることが減ります。
「虫さん、どこにいったの?」と不思議そうに尋ねる子どもたちの声は、季節の変化に気づくサイン。
虫が少なくなる冬には、生きものたちが寒さを乗り越えるために身につけた“知恵”が隠れています。
冬眠や越冬を切り口に、子どもと一緒に季節を感じる視点を考えてみませんか。
虫たちは、どこへ行ったの?
冬に虫が少なくなる理由の一つは、気温の低下です。多くの虫は体温を自分で調節できないため、寒さが厳しくなると活動が難しくなります。そのため、姿を消したように見えるのです。
実際には、落ち葉の下や土の中、木の皮のすき間など、寒さをしのげる場所に身をひそめています。チョウはさなぎのまま、テントウムシは成虫のまま集団で越冬するなど、虫の種類によって過ごし方はさまざまです。
「いなくなった」のではなく、「見えないところで生きている」のですね。
冬眠・越冬は“おやすみ”じゃない
冬眠や越冬という言葉から、「ずっと寝ている状態」を想像することもありますが、実際には少し違います。活動を最小限に抑え、エネルギーを使わずに寒い時期をやり過ごす、生きるための工夫です。
この姿は、子どもたちにとっても身近な感覚につながります。「寒いときは無理に外に出ない」「疲れたら休む」といった、人の生活とも重ねて考えられるからです。
生きものの知恵を通して、「休むことも大切」「環境に合わせて過ごし方を変える」というメッセージを伝えられそうですね。
気づきを育てる、保育者の関わり」

虫の姿が少ない冬は、見つける楽しさよりも想像する楽しさが広がる季節です。
「春になったら、また会えるかな」といった声かけをしたり、図鑑を一緒に見たり、以前見つけた虫の話を振り返ったりすることで、季節が循環していることにも気づきやすくなります。
目に見えないものを思う経験は、自然への敬意や、生きものへのやさしさを育てる土台になります。
まとめ
冬に虫が少ない理由を知ることは、ただの知識にとどまりません。
生きものが環境に合わせて生きていること、待つ時間にも意味があることを、子どもと一緒に感じる機会になります。静かな冬の園庭だからこそ見えてくる生きものの知恵。その気づきを、日々の保育にそっと重ねていきたいですね。
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佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |
