「卒乳はもう少し先にしようかと思います」とか「先週から断乳しているので夜泣きがひどくて……」といった相談を保護者から受けることはありませんか?
卒乳と断乳はどちらも「母乳を飲まなくなること」という意味ですが、その過程が異なります。ここでは、卒乳と断乳について、そして保育者が配慮したほうがよいポイントを解説していきます。
卒乳と断乳はどう違う? それぞれの意味を解説
・卒乳とは
卒乳とは、子どもが自分自身の意思によって母乳を飲むのを卒業することを意味します。つまり、大人ではなく子どものタイミングでおっぱいをやめることです。
しかし近年は、保護者の意思に基づき徐々に授乳回数を減らし、子どもが嫌がることなく母乳を飲まなくなることも卒乳と捉えるようになってきました。
・断乳とは
断乳とは保護者の意思により母乳を与えるのもやめることを意味します。職場復帰や病気、下の子を妊娠したという理由で断乳を決める方が多いです。
保育者の配慮ポイント
・時期の目安は離乳食をしっかり食べられているかどうか
卒乳や断乳のタイミングは保護者と子どもが決めるものであり、保育者が指示を出すものではありません。ただし、一つの目安として「離乳食でしっかりと栄養が摂れるようになったこと」があります。保護者がタイミングを迷っていたら、離乳食の進み具合を確認してみましょう。
・保護者の気持ちに寄り添う
保育園を利用する保護者の多くは、入園までに母乳をやめることを検討します。園によっては冷凍母乳を預かって対応する場合もありますが、就労しながら直接母乳を続けることはお母さん自身の負担も大きく、授乳間隔があいてしまうと乳房のトラブルが発生するリスクも考えられます。
入園前後のタイミングで保護者から卒断乳の相談を受けることは珍しくありません。上述した事情があることを踏まえ、保護者の気持ちや希望に寄り添いながら話を聞くことが大切です。
・母乳を続けたい場合は親子に負担のない計画を
「入園前に母乳はやめてもらわないと保育に支障があります」といった言い方は、保護者の気持ちを傷つけてしまう可能性があります。「おっぱいをやめたくない」「もう少し母乳を続けたい」と考える保護者がいたとしても、その気持ちを尊重しながら親子にとって負担のない計画を一緒に考えていきましょう。園に通いながら無理なく母乳を続けている親子もたくさんいます。
・母乳外来を紹介する
母乳育児や卒断乳に関することは助産師に相談すると適切なアドバイスをもらえる可能性が高いです。お母さんの体のトラブルや子どもの夜泣きに関しても、具体的な対策を教えてもらうことができます。母乳外来を実施している助産院や、それに準ずる自治体のサービスがあれば、保護者に紹介してみるのもよいでしょう。
卒断乳に正解はない
母乳育児、そして卒乳や断乳に正解はなく、他者に急かされるものでもありません。ちょうどよい方法やタイミングも人それぞれ異なります。また、おっぱいのこと=お母さんのことと考えがちですが、スムーズな卒乳や断乳にはパートナー(お父さんなどの保護者)の協力も重要。お母さんだけに負担が集中しないように周囲が配慮するのも大切なことです。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |